はじめに。序にかえて
タイトルをご覧になった瞬間、察しのいい読者なら、いかな代物になるかは、おわかりであろう。そう、拙稿に登場する「肉屋」が扱うのは、家畜ないし家禽の肉ではない。概ね白い、女の肉だ。なので、いわゆるフェミニストの方々に、拙稿をお読みいただくことは、勧めない。ただしこの「肉屋」は、女衒とは違う。どう「捌く」かに興味のある方は、ぜひお読み頂きたい。
1
都内の下町、JR駅近くにある四階建てのウィークリーマンションの一室。その四階。昼下がり。カウントするのが面倒な元号で数えれば、区切りのいい三十年。猛暑の夏であった。梅雨が明けた、七月下旬に、差し掛かった頃合いだった。
一人の四十路と思しい男が、スマートフォン片手に、エアコンの冷房が目いっぱい効いた部屋で、そこにいっぱいいっぱいのダブルベッドに寝そべっていた。電話を右耳に当てて、左腕を枕代わりにしていた。低音の、平坦な声で、彼はしゃべっていた・・・黒いTシャツに水色のトランクス姿で話す彼の枕元には、なぜか開きっぱなしのレディースコミックがあった。180センチ前後の長身の男には、いささか不釣り合いであった。
「言われた通りの格好になりました・・・」
幾分、羞恥のにじみ出る女の声が、ベッドに横たわる、中出知男の耳に入る。
「どうですか?その恰好」
「恥ずかしいです」
女の吐息が、スマホから洩れていた。彼の右手は、股間に伸びていたが、しごくには至らず。
「さすがに、全裸で正座姿は、恥ずかしいですか」
スマホからは、女の、いやらしさの滲む吐息が漏れ出ていた。
「はい・・・」
「悪く思わないでくださいね。あなたを確かめるためなので」
「どういう意味ですか?」
息を弾ませながら、女は訊ねた。
「姿が見えないからと、相手に偽るような者にお願い出来ることではないものですから」
「ではわたしは、どうだと言うんですか」
「現時点ではOKです。もっとも、これからが本番ですが」
「何をさせるんです?」
「いずれわかりますよ、ふふふ・・・」
中出の口調に、女はより呼吸を乱し始めた。それを数分、彼は黙って聞いた。何も言わなくなった彼に、息を乱しながら女は、
「もしもし、どうして何も言わないのですか?」
「ふふふふ・・・あなたの乱れた息音を、じっと聞いていたのですよ」
切なさのにじむ声で女は、
「意地の悪いことしないでください。わたしだって、したくてしてるんじゃないんです」
「そりゃあ丸裸で、正座なんてねぇ」
「言わないで」
やや低音で、クリアな女の声は、中出の一物をより膨らませた。
「では、おききしますね」
「はい。なんでしょう」
「あなたの名前、身長、スリーサイズ、年齢をお聞かせください」
Reviews (0)