しまいに苦しがって袖の中から、おれの二の腕うでへ食い付いた。痛かったから勘太郎を垣根へ押しつけておいて、足搦あしがらをかけて向うへ倒たおしてやった。山城屋の地面は菜園より六尺がた低い。勘太郎は四つ目垣を半分崩くずして、自分の領分へ真逆様まっさかさまに落ちて、ぐうと云った。勘太郎が落ちるときに、おれの袷の片袖がもげて、急に手が自由になった。その晩母が山城屋に詫わびに行ったついでに袷の片袖も取り返して来た。
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