「俺も友達と飲んでて、今ちょうど解散したところ、よかったら飲み直そう。」
そんな趣旨の話をした。彼女は迷っている様子だった。電話で誘い出すのは難しかった。微妙な空気感が流れた。そのまま、駅で待っててもらうことにした。
5分程度で有楽町の駅まで到着した。彼女はストライプのグレーのスーツに身を包み、腕組みをしながら私を待っていた。
「じゃあ行こうか。」
私は自信満々な笑みで彼女の手を引いた。
「ちょっ!(笑)」 彼女は笑いながら抵抗する素振りを見せた。しかし、これが形式的なものであることは、私は分かっていた。そもそも、私に全く興味がなく、かつ飲みに行く気が1ミリも無いのであれば、駅で私を待つ余地は彼女にはない。
彼女の住んでいるところがたまたま井の頭線沿いであったため、そのまま渋谷で飲み直すことを打診した。彼女は少し思案し、提案を了承した。彼女は非常に流されやすいタイプだった。M気質があり、私の得意なタイプと言えた。
そのまま、渋谷までお互いの仕事観や恋愛観など他愛もない会話をしながら、電車で移動した。渋谷には20分程度で到着し、オススメのお店があることを告げる。向かう先はもちろん、マスカルポーネのピザとシャンパンが美味しい、いつものあの店だ。
ハチ公改札を抜けて、109の左手の文化村通りを進み、ドンキホーテを左折する。程なくして、お店に辿り着いた。ワインクーラーから美味しそうなロゼのシャンパンを取り出し、店員に渡す。ここにきてやっとホーム感が感じられた。
彼女の付き合った人数は3人。元彼とは5年付き合っていた。25歳の彼女は、真面目な恋愛を好んでいる様子だった。私はよく外見に関して「遊んでそう」と言われ、それを自分でも認識していた。(実際に遊んでいるのだが。)そこで、会話の中で仕事に向かう姿勢や、恋愛と対峙する姿勢を話し、意外に真面目であるという印象へ誘導していく。ギャップ感の創出だ。
シャンパンを一本あけたところで、彼女はほろ酔いになっていた。終電も差し迫っていたが、既に時計をチェックする仕草もない。勝利を確信していた。彼女がトイレに立ったところで、手早く会計を済ませる。同時に、彼女の最寄りまでの終電の時間をチェックする。電車で帰宅するには、もうすでに始発を待つしか選択肢がないことは明らかだった。
「じゃあそろそろ行こうか。」
私は言った。
「え、ちょっと待って!お会計は?(笑)払うよ!」
彼女は財布を慌てて取り出しながら言った。
「お連れさまがお綺麗だからお代は結構ですって言われたよ?」
私は笑いながら言った。
「(笑) ありがとう、ごちそうさまでした。」 彼女は笑顔で言った。 「危ないから段差気を付けてね。」 私がそういうと、彼女は自分の左腕を私の右腕に絡ませてきた。 そのまま、ホテルへ。
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